平成28年から開始された経営力向上計画という制度があります。
即時償却や法人税の優遇措置が受けれるなど中小企業にとって、様々なメリットがある制度です。
実はこの経営力向上計画は事業再構築補助金と併用できるのはご存知でしょうか。
今回は事業再構築補助金と経営力向上計画が併用できる点とメリットについて解説していきます。
対象になる事業者の方はぜひ事業再構築補助金と経営力向上計画の併用を検討してみてください。
事業再構築補助金と経営力向上計画は併用可能
事業再構築補助金と経営力向上計画は併用可能です。
理由は中小企業経営強化税制 Q&A集(AB類型共通)の中で下記の通り回答されているためです。
共ー6
Q:設備取得の際に国又は地方公共団体から補助金を受けた場合でも、税制の対象となるの
か。
A:はい、原則として対象になります。法人税法上の「圧縮記帳」の適用を受けた場合は、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額となります。同様に、「積立金方式」を用いた場合も、税務上の取得価額は補助金額等を差し引いた価額となります。また、補助金の交付年度が翌事業年度になる場合においては、予定交付額を差し引いた価額が税額控除対象金額となります。また、補助金側に併用を制限する場合がありますのでご注意ください。
このように経営力向上計画は国から補助金を受けた場合でも、税制の対象となるため、事業再構築補助金と併用が可能ということになります。
ただし、事業再構築補助金で圧縮記帳の適用を受けた場合は圧縮記帳後の金額が税務上の取得金額になるという点は注意しておいてください。
事業再構築補助金における圧縮記帳の取り扱いについては下記の記事を参考にしてみてください。

経営力向上計画とは
経営力向上計画とはは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画のことをいいます。
経営力向上計画を策定することで、税制優遇や金融の支援を受けることができます。
主な税制優遇は下記の2つ。
- 法人税の即時償却や税額控除・・法人税から設備投資の取得価格の最大10%(資本金 3,000万円超1億円以下の法人は7%)を控除
- 事業承継に関する税制優遇
特に大きいのは法人税の即時償却や税額控除です。
大型の設備投資になればなるほど控除額が大きくなります。
税制優遇の他にも、金融支援や法的支援などをうけることができ、経営力向上に大きく役立つ制度と言えるでしょう。
参考資料:-中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは新型コロナウィルス感染症の影響で、苦境に立たされている中小企業が再度成長できるために必要な経費を補助する制度です。
通常枠の補助率は66%,補助額は最大8,000万円(特別枠は補助率3/4,補助額1.5億円)と過去最大規模の補助金となっています。
事業再構築補助金を申請するための主な要件は下記の3つです。
- コロナ前と比較し、売上が減っている
- 事業の再構築に取り組む
- 認定支援機関とともに事業計画を策定する
補助金額が大きく、補助率が高い一方で、要件は厳しくありません。
近年では有力な補助金といえるでしょう。
事業再構築補助金だけでも十分に大きな補助になるといえますが、経営力向上計画と併用することで、より大きなメリットをうけることができます。
次の章では具体的に事業再構築補助金と経営力向上計画を併用することによるメリットを解説していきます。
事業再構築補助金と経営力向上計画を併用するメリット2選
事業再構築補助金と経営力向上計画を併用するメリットは下記の2点です。
- 最大級の補助金に加えて、税制優遇を両方受けれる
- 低金利融資を受けられる可能性が高くなる
具体的に解説していきます。
最大級の補助金と税制優遇を両方受けれる
事業再構築補助金の補助率は66%,補助額は最大8,000万円(回復・再生応援枠や最低賃金枠は補助率3/4,グリーン成長枠は補助額最大1.5億円)とこれだけでも大きな補助です。
それに加えて、経営力向上計画の法人税の即時償却や税額控除も受けられるので、経営にとって大きな力となるのは間違いありません。
事業再構築補助金は補助金額が大きく、また受け取った補助金額は原則として益金として算入されるため、法人税が大きくなりがちです。
しかしながら、経営力向上計画の即時償却や税額控除をうけることで、法人税の支払いを抑えることができるので、相性の良い併用方法と言えるでしょう。
低金利融資を受けられる可能性が高くなる
事業再構築補助金は大きな投資をする事業を行う必要があり、なおかつ後払いのため、キャッシュが足りなくなりやすいです。
そのため、資金調達がほとんどのケースで必要となってきます。
その資金調達に経営力向上計画の金融支援策を使うという手があります。
金融支援策とは、日本政策金融公庫や商工中金といった政府系金融機関から低金利融資を受けられる可能性が高くなるという、経営力向上計画のメリットの一つです。
つまり、経営力向上計画の金融支援を使うことで、事業再構築補助金で必要な資金を低金利融資で借りられる可能性が高くなるということになります。
資金調達という面からも経営力向上計画と事業再構築補助金を併用するメリットは大いにあると言えるでしょう。
事業再構築補助金と経営力向上計画による即時償却の数値例
事業再構築補助金と経営力向上計画の即時償却を行った場合の損益計算・収支計算の例を見てみましょう。
事業再構築補助金を活用してコインランドリー事業を開始した場合を想定します。
まずは全額自己資金で事業を始めた場合と、事業再構築補助金を利用した場合の損益比較を行ってみました(年間利回りを約10%と仮定しております)。
全額自己資金で投資した場合 | 単位:万円 | |||
投資額 | 2,500 | 年間売上 | 750 | |
自己資金(全額) | 2,500 | 年間経費 | 500 | |
年間利益 | 250 | |||
想定利回り(税引前) | 10% | |||
想定利回り(税引後) | 7% |
事業再構築補助金を活用した場合 | ||||
投資額 | 2,500 | 年間売上 | 750 | |
補助率(通常枠) | 2/3 | 年間経費 | 500 | |
補助金額 | 1,667 | 年間利益 | 250 | |
自己資金 | 833 | 想定利回り(税引前) | 30% | |
想定利回り(税引後) | 21% |
このように、コインランドリー事業に利用できれば、税引き後の利益ベースでも21%という非常に大きな利回り・収益率が期待できます。
次に、事業再構築補助金の利用を前提とした上で、経営力向上計画による即時償却を組み合わせた場合の収支計算(キャッシュフローベース)をしてみます。
経営力向上計画の利用しない場合(事業再構築補助金のみ利用) | ||||
投資額 | 2,500 | 年間キャッシュイン | 750 | |
補助率(通常枠) | 2/3 | 年間キャッシュアウト | 500 | |
補助金額 | 1,667 | 年間収支(税引前) | 250 | |
自己資金 | 833 | 税金 | 88 | |
想定利回り(キャッシュフローベース) | 20% |
事業再構築補助金と経営力向上計画の即時償却を活用した場合 | ||||
投資額 | 2,500 | 年間売上 | 750 | |
補助率(通常枠) | 2/3 | 年間経費 | 500 | |
補助金額 | 1,667 | 即時償却額(繰越の意味合いで5年分割) | 350 | |
自己資金 | 833 | 税金 | 0 | |
想定利回り(キャッシュフローベース) | 30% | |||
※投資額のうち、即時償却の可能部分を70%と仮定 |
コインランドリー事業の年間想定収支が30%となり、非常に高い事業効率・投資効率を実現することができます。
コインランドリー×事業再構築補助金のついては、以下の記事を参照ください。


まとめ
今回は事業再構築補助金と経営力向上計画の併用は可能かという点と具体的なメリットについて解説してきました。
ポイントをまとめると下記の通り。
- 事業再構築補助金と経営力向上計画は併用が可能
- 最大級の補助金と税制優遇を両方受けれる
- 資金調達を低金利で受けられる可能性が高くなる
両方を申し込める状況にある事業者の方はメリットが大きいので、ぜひ両方の採択を狙ってみてください。
もし、「事業計画書が作成できず、困っている」「認定支援機関が見つからず、困っている」という方はまず一度ご相談ください。
事業再構築補助金について他にもまとめておりますので参考にしていただければ幸いです。
https://mono-support.com/saikouchiku/
また事業再構築補助金がどの様ものかわからないといった方は下記HPをご覧ください。
https://jigyou-saikouchiku.jp/
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