2023年度の事業再構築補助金の大きな変更点の一つとして、成長枠、グリーン成長枠で給与総額増額要件が追加されたことがあります。
給与総額増額要件とは成長枠、グリーン成長枠に取り組むためには給与総額を年間ベースで2%引き上げる必要があるという要件です。
今回はこの給与総額増額要件の概要やペナルティ、必要な書類について解説していきます。
給与総額増額要件とは?
給与総額増額要件とは給与総額を年間ベースで2%引き上げる必要があるという要件です。
詳細は下記の通り。
(5)【給与総額増加要件】について
応募申請にあたり、以下の点に留意してください。
ア.補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度の給与支給総額を基準とし、補助事業終了後の3~5年の事業計画期間中、給与支給総額を年率平均で2%(賃上げ加点を受ける事業者は3~5%。)以上増加させる計画を作成し、適切に実行いただく必要があります。応募時に賃金引上げ計画の誓約書を提出してください。また、正当な理由無く、上記の水準に達していなかった場合には、その事業者名を公表します。
※「応募時点で直近の事業年度の給与支給総額」 ≦ 「基準年度の給与支給総額」である必要があります。
応募以降に給与支給総額を引き下げることにより本要件を達成することは認められません。
また、補助率の引上げを受ける場合、6%以上の引上げ後に一時的に給与支給総額を引き下げることは認められません。
例えば、令和6年度に6%引上げた後、令和7年度は同水準、令和8年度以降は2%ずつ引上げる場合は認められますが、令和6年度に6%引上げた後、令和7年度に12%下げることによって、令和8年度以降の年率平均2%以上増加させる要件を容易に達成することは認めらず、継続的に賃金を引上げる必要があります。イ. 給与支給総額の確認に当たって、法人の場合は、法人事業概況説明書の提出を求め、人件費の欄に記載された金額で判断します。個人の場合は、所得税青色申告決算書の提出を求め、給与賃金、専従者給与、青色申告特別控除前の所得金額の欄に記載された金額の合計で判断します。
具体的な内容について次の章から解説していきます。
応募以前の引き下げは認められない
応募以前に給与を一時的に引き下げる行為は認められません。
このような悪質な対応については補助対象外となる可能性がありますので、注意しましょう。
給与の範囲
給与の範囲は下記の通り。
- 法人の場合「法人事業概況説明書の提出を求め、人件費の欄に記載された金額」
- 個人の場合「所得税青色申告決算書の提出を求め、給与賃金、専従者給与、青色申告特別控除前の所得金額」
具体的には下記の通り。
【法人】
・売上原価に含まれる労務費(福利厚生費、退職金等を含んだもの。)
・一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与、賞与及び賞与引当金繰入れ、福利厚生費、退職金及び退職給与引当金繰入れ
・派遣労働者、短時間労働者の給与を外注費で処理した場合のその費用
ただし、これらの算出ができない場合においては、平均給与に従業員数を掛けることによって算出してください。
【個人事業主】
青色申告決算書(損益計算書)上で以下の費目が人件費に該当します(丸数字は、所得税申告決算書の該当番号です)。
福利厚生費+給料賃金(⑲+⑳)
※個人事業主の付加価値額算定では、人件費の構成要素である㊳専従者給与(=ご家族の方等のお給料)および㊸青色申告特別控除前の所得金額(=事業主個人の儲け)の2項目を「人件費」に参入せずに計算します。
人件費については下記の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
https://mono-support.com/saikouchiku/labor-cost/f
給与総額増額要件の対象となる類型
給与総額増額要件が求められるのは「成長枠、グリーン成長枠、卒業促進枠(グリーン成長枠、成長枠)、大規模賃金引上枠(グリーン成長枠、成長枠)」です。
一方で、「産業構造転換枠、サプライチェーン強靱化枠、最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠」は給与総額増額要件が必要ありません。
給与総額増額要件が事実上達成するのが難しいという事業者は要件がそこまで厳しくない「物価高騰対策・回復再生応援枠、最低賃金枠」を利用できないか検討してみることをおすすめします。
給与総額増額要件を満たさない場合
給与総額増額要件を満たさない場合は「正当な理由無く、上記の水準に達していなかった場合には、その事業者名を公表します」との記載があります。
現時点で補助率や補助額が減額されるという記載はありません。
とはいえ、事業者名が公表されると今後の取引先との取引や、補助金や給付金の受給に影響がでる可能性があります。
必ず給与総額増額要件を達成するような取り組みをしていきましょう。
給与総額増額要件で必要な書類
グリーン成長枠と成長枠といった給与総額増額要件が必要な類型で申請する場合、下記の書類が2点必要となります。
- 賃金引上げ計画の誓約書(事業者名)
- 賃金台帳の写し(事業者名)
賃金引上げ計画の誓約書は下記の通り。
まとめ
今回は給与総額増額要件の概要やペナルティ、必要な書類について解説してきました。
ポイントは下記の通り。
- 事業再構築補助金で新たに給与総額増額要件が追加
- 給与総額を年額2%ベースで引き上げるというもの
- 成長枠、グリーン成長枠が対象
- 未達のペナルティは事業者名の公開
- 賃金引上げ計画の誓約書、賃金台帳の写しを提出する必要がある
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