事業再構築補助金

事業再構築補助金、産業構造転換枠で美容業が追加!ポイントを解説

事業再構築補助金、産業構造転換枠で美容業が追加!ポイントを解説

2023年5月24日に美容業が産業構造転換枠の事業再構築補助金の対象業種・業態として追加されました。
産業構造転換枠は市場拡大要件が設定されていない上に、補助率・補助額が優遇されており、対象者にとってはメリットが大きい類型の一つです。
対象となる美容業の方は必ず検討すべき補助金といえるでしょう。
そこで今回は事業再構築補助金、産業構造転換枠の概要と主な対象事業者、過去の採択事例などのポイントを解説していきます。

産業構造転換枠とは?

まず事業再構築補助金の産業構造転換枠について解説していきます。
産業構造転換枠の概要は下記の通り。

目的成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者に向け、売上高減少要件を撤廃した成長枠
補助上限金額
  • 【従業員数 20 人以下】 100 万円 ~ 2,000 万円
  • 【従業員数 21~50 人】 100 万円 ~ 4,000 万円
  • 【従業員数 51~100 人】 100 万円 ~ 5,000 万円
  • 【従業員数 101 人以上】 100 万円 ~ 7,000 万円
    ※廃業を伴う場合には、廃業費を最大 2,000 万円上乗せ
補助率
  • 中小企業者等 2/3
  • 中堅企業等 1/2
要件
  • 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること【事業再構築要件】
  • 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融
    機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)の確認を
    受けていること【認定支援機関要件】
  • 補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業
    員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を
    策定すること【付加価値額要件】
  • 現在の主たる事業が過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模が 10%以上
    縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新
    規事業を実施すること、または地域における基幹大企業が撤退することによ
    り、市町村内総生産の 10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施
    しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の 10%以上を占めるこ
    と【市場縮小要件】

<以下は第 1 回~第 9 回公募で補助金交付候補者として採択されている又は交付決定を受けている場合の要件> 

  • 既に事業再構築補助金で取り組んでいる又は取り組む予定の補助事業とは
    異なる事業内容であること【別事業要件】
  • 既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの
    体制や資金力があること【能力評価要件】

特に注目すべき点は市場縮小要件です。
市場縮小要件の市場規模が 10%以上縮小する業種・業態に属しているという点は事務局が指定しており、指定された事業に属している中小企業が産業構造転換枠に申請できるファーストステップをクリアしたということになります。
美容業は対象業種・業態となっていますので、ファーストステップについては問題ありません。
問題は「当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること、または地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の 10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の 10%以上を占めること」という点です。
高いハードルが設けられているため、美容業の方でも対象となる事業者の方は多くはありません。
しかしながら、メリットの大きい類型なので、対象となる事業者は大きなチャンスといえるでしょう。

対象となる美容業

日本標準産業分類によると、美容業(7831)は「主としてパーマネントウェーブ、結髪、化粧などの美容サービスを提供する事業所」を指します。具体的には美容室、美容院、ビューティサロンなどが該当します
しかし、美容学校、エステティックサロン、マニキュア業、ペディキュア業、ペット美容室などはこのカテゴリには含まれません
一般的な美容業とは異なる点は注意する必要があります。

産業構造転換枠では市場拡大要件がなく、自由に事業が可能

産業構造転換枠に取り組む大きなメリットとして挙げられるのが、市場拡大要件が設定されていないため、自由に事業ができるという点です。

市場拡大要件とは、「補助事業として取り組む事業が、過去〜今後のいずれか10年間で、市場拡大が10%以上拡大する業種・業態に属する必要があります(事務局が指定した事業しか取り組めない)」というものです。
基本的な類型である成長枠ではこの市場拡大要件が設定されているため、自由に事業することができません。
一方で、産業構造転換枠では、市場拡大要件が設定されていないため、対象となる美容業は自由に事業を展開することが可能となります
美容業者は新しい事業領域への進出や新しいサービスの提供など、これまで以上に多様なビジネスモデルを模索し、展開することが可能となります。

美容業の代表的な採択事例

美容業での代表的な採択事例を紹介します。(第8回公募まで)

事業計画名事業計画の概要
完全個室型美容サロンへの転換理容師不足と美容室を利用する若い男性が増えていることから、コロナ禍でも安全・安心に施術が受けられる完全個室型美容室に事業転換する。
美容業及び「幻のミルク」ソフト販売からオーガニックジェラート製造販売への新分野展開経営多角化を図る中、コロナ禍で美容室売上が減少したことから、「幻のミルク」ソフト販売で好評な牛乳と地元食材等を活用した、オーガニックジェラート製造及び小売、卸売販売の新分野に展開。
最先端美容機器を備えた総合美容サロンの開設美容業界の聖地である原宿、そして全国の参拝者数トップの明治神宮前すぐ近くに、レンタル着物サロン、ネイルサロン、エステサロン、ホワイトニングサロン、美容室を備えた総合美容サロンを開設する。
老舗美容室の和装技術を活用した着物レンタル事業への新分野展開個人が所有する上質な着物を取り揃え、当社の美容室で培ってきた着付け等の和装技術を活用し、顧客の希望や目的に応じてTPOに合った着物の組み合わせや着こなし等の提案とともに着物の提供を行う。
完全非接触・非対面のWEB予約決済一体型セルフ脱毛サブスクサービス美容室を経営している既存事業だけでなく、新しい美容業としてセルフ脱毛サロンを出店。アフターコロナを見据え完全非対面・非接触の上WEBで決済完了できるサブスクリプションシステムを実現。新規顧客獲得と販路拡大を狙う。
自社の特許技術を活用したヘッドスパサロンへの事業展開新分野展開として、既存事業の『美容室』(ヘアメイクサロン)で特許を取得しているシャンプー技術を応用した新たなるサービスとしてヘッドスパサロン店による事業拡大をします。
髪の健康を守るヘアケアに特化した美容室を開業して顧客拡大に挑戦近年、ブリーチに伴う髪の痛みに悩む女性が増えており、ヘアケア市場の増加に着目しました。ヘアケア専門美容室では施術だけではなく共同開発したシャンプーを販売し、自宅でも安価なホームケアができる指導を行い、顧客ニーズに応えられるヘアケア専門美容室で売上のV字回復に挑戦します。
高級トリートメントを使った髪質改善が人気の美容室が、ニーズが高まっているヘッドスパ事業に本格参入2011年から銀座の一等地で営業を続けるアットホームな雰囲気の美容室が、限られた事業者でしか提供できないアロマオイル等を使い、確かな技術と知識を持った有資格者が提供する極上のヘッドスパ事業をスタートする
美容室から美容・コスメのキュレーションメディアへの新分野展開美容室を営む当社は、コロナ禍で売上と利益が大きなダメージを受けた。ジリ貧の状況から脱するために、既存の知識と人材を活かした「美容・コスメのキュレーションメディア」への新分野展開で、V字回復を実現する。
ウィズコロナ時代の「地域密着型」美容室の開業田園都市線沿線のファミリー層向け「地域密着型」美容室を開業。ウィズコロナ時代に対応した技術とサービスを導入し、お店全体に安心感を感じてもらえてリピートにつながるお店づくり。業界にとらわれない経営で、美容業界の働き方も変えていく先駆けとなる事業です。
美容室店舗スペースの改修とヘッドスパ・写真撮影事業への展開美容室スペースの一部を改修し、池袋周辺の働く女性をターゲットにしたヘッドスパ事業と、若い女性の成人式や入学・卒業式などの「ハレの日」に向けた着付けや写真撮影サービスを開始します。
美容室×ネイルサロンによるトータルビューティーサロンの展開経営する美容室の空きスペースを利用し、美容室×ネイルサロンによるトータルビューティーサロンの展開。カウンセリングから仕上げまで一対一で施術するマンツーマンシステムを導入し、顧客満足を図る。
東京表参道の美容技術を世界へ発信、オンライン美容教育事業の新展開当社は、美容技術を高めたいと考えている国内外の美容室・美容師の教育市場を選択し、それに対し、当社の強みである美容技術等の経営資源を集中する、「オンラインの美容教育事業」を新たに展開します。
コロナで打撃を受けた美容店舗のDX化サービス事業への業種転換当社は美容室を93店舗運営。コロナの影響で客足が激減し、売上も激減。今般、既存事業で得たユーザー分析/顧客基盤を活かし美容業界のDX事業(ECプラットフォーム運営/人材マッチサービス)に業種転換し再建を図る。
ストレスフルな時代を生きる皆様に。藤沢市発!育毛に特化したヘッドスパ事業!当社は神奈川県藤沢市にて、昭和54年から営業している美容室である。今回市場が拡大している「育毛」に特化したヘッドケア専門店を開業する。藤沢エリアでは初の育毛専門サロンであり地域の活性化にも貢献する。
美容室とのシナジーを活かした地域初、男女兼用個室型脱毛サロンの展開コロナの影響により美容室が減収していく現状からの脱却と、美容院数増加による競争激化に対応するべく、ヘアケア+脱毛という体のケアのワンストップ対応を可能とし売り上げ拡大及び他店との差別化を図る。
日本未病ケア予防医学協会の知見を活かした「エステ以上治療未満」の美容サロン運営既存事業では、静岡県で美容室を2店舗、ネイルサロンを2店舗経営。開業から5年間で4店舗まで店舗展開を成功させ、多くの固定顧客を獲得し順調に事業を継続してきた。しかし新型コロナウイルス感染拡大を受け、売上が激減。これまでに培った美容業界の知識や経営ノウハウを活かして、予防美容としてのサロンを開業することで、売上向上に繋げようと本新規事業を計画した。

 

まとめ

今回は事業再構築補助金、産業構造転換枠で美容業が追加された点と概要を解説してきました。
ポイントは下記の通り。

  • 産業構造転換枠において美容業が新たに追加
  • 産業構造転換枠は市場拡大要件がないため、自由に事業が可能
  • 大企業撤退や大企業との取引などの要件も満たす必要がある

 

 

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