中小企業省力化投資補助金(一般型)で採択を狙うなら、設備やシステムの説明以上に重要なのが「労働生産性」です。
公募要領では、労働生産性の定義だけでなく、年平均成長率(CAGR)+4.0%以上の計画策定が基本要件として明確に示されています。
さらに、審査では「部分的な省力化」に留まらず、省力化で生まれた時間・労働力を高付加価値業務に振り向け、会社全体の成果(賃上げ等)につながるかまで見られます。
そこで今回は労働生産性の定義や計算方法、実際のモデル例に基づいた解説をしていきます。
Contents
公募要領に沿った「労働生産性」の定義と、使う年度のルール
公募要領(一般型)では、労働生産性を次のように定義しています。
(労働生産性)=(付加価値額)÷(労働者数)
ここで重要なのが「どの年度の数字を使うか」です。
労働生産性を算出する際の各値は、報告を行う時点で期末を迎えている直近の事業年度の値を用いる、という考え方が基本になります。
加えて、応募申請時の労働生産性は、応募申請時点で確定している直近の決算書に基づいて算出する扱いです。
労働者数のカウントに注意
「労働者数」は、従業員だけでなく、役員も対象となります。
※「労働者数」とは、「2-1.補助対象者」に記載する従業員数に役員(個人事業主の場合は事業主及び専従者)の人数を加えたものです。
中小企業省力化投資補助金関連リンク
年平均成長率(CAGR)の式と「効果報告回数」の意味
中小企業省力化投資補助金(一般型)では、「今年ちょっと伸びた」では足りません。
労働生産性が毎年どれくらいのペースで伸びたかを、年平均成長率(CAGR)で判定します。
そもそもCAGR(年平均成長率)って何?
CAGRは一言でいうと、
「申請時から比べて、毎年平均で何%ずつ労働生産性が伸びたことになるか」
を表す指標です。単年のブレ(たまたま良い年/悪い年)があっても、平均の伸びで評価できるのが特徴です。
公募要領の計算式(CAGR)
公募要領では、労働生産性の年平均成長率(CAGR)は次の式で表されます。
なお、「^」はべき乗(Power)を意味します。
(労働生産性の年平均成長率)={(効果報告時の労働生産性)÷(応募申請時の労働生産性)} ^(1/効果報告回数) − 1×100(%)
※ポイント:「年平均」に戻すために、通常は(1/効果報告回数)のべき乗で計算します。
「効果報告回数」って何?(超重要)
ここが一番つまずきやすいところです。
効果報告回数 = 申請時から、何回分(何年分)の結果で評価するか
たとえば、効果報告が3回ある場合は、
- 申請時の労働生産性 → 3回目(3年目相当)の労働生産性
- その伸び(比率)を「3年で平均すると毎年何%増?」に直す
というイメージになります。
例:効果報告回数が3回のとき
申請時と比べて労働生産性がこう変化したとします。
- 応募申請時の労働生産性:400万円/人
- 効果報告時(3回目)の労働生産性:460万円/人
- 効果報告回数:3回
比率:460 ÷ 400 = 1.15
CAGR: (1.15 ^ (1/3) − 1) × 100
≒ (1.0477 − 1) × 100 = 約4.77%
つまり、「3年間で15%伸びた」だけでなく、
毎年平均で約4.77%ずつ伸びたことになる、という判断になります。
基本要件:労働生産性CAGR+4.0%以上(3~5年計画)
一般型では、3~5年の事業計画期間において、
労働生産性を年平均成長率(CAGR)で+4.0%以上向上させる計画
を作ることが基本要件です。採択された場合は、その計画に沿って取り組む必要があります。
なので申請書では、単に「設備を入れます」ではなく、
導入によって労働生産性が“毎年4.0%以上伸びる根拠”までセットで示すことが大切です。
「解雇で数字を作る」計画は対象外(注意)
ここも非常に重要です。要件達成のために、
主として従業員の解雇で、労働生産性などの数値を“操作”するような計画は対象外
という趣旨が明確です。
NGになりやすい考え方
- 人員削減で「労働者数」を減らし、分母を小さくして生産性を上げる
評価されやすい王道の考え方
- 省力化で生まれた時間・労働力を、高付加価値業務へ再配分する
- 結果として付加価値額(利益や生産量、粗利)を増やす
- その延長で賃上げにつなげる(全社最適の視点)
つまり、「人を減らして達成」ではなく、
省力化で“余力”を作り、会社全体の成果(付加価値・賃上げ)に変えることが、採択に近い考え方です。
審査で刺さるのは「部分的な省力化」ではなく「会社全体の省力化」
審査では、補助事業の省力化が会社全体にシナジーや成果をもたらす取り組みになっているか、という観点が強調されています。
具体的には、省力化された時間・労働力を高付加価値業務に振り向け、賃上げにつながるような全社最適(柔軟なリソース最適化)になっているかが焦点です。
また「その3:会社全体の事業計画(指定様式)」で、労働生産性や給与支給総額等の算出について、算出根拠の記載または別途提出が求められる点も重要です。
数字だけ置いて終わりではなく、根拠資料(算定表・前提条件)まで含めて整える必要があります。
【モデルケース】CAGR+4.0%を満たす「労働生産性」設計例(計算付き)
ここでは、公募要領の考え方に合わせて、申請時(直近確定決算)→効果報告時(報告時点の直近年度)で数字をつなぎ、さらに効果報告回数を使ってCAGRを計算するモデルを示します。
モデルケース① 製造業:省人化で浮いた時間を「段取り改善・高付加価値品」へ再配置(解雇なし)
前提(応募申請時:直近確定決算)
- 労働者数:20人(定義を固定してカウント)
- 付加価値額:8,000万円(営業利益+人件費+減価償却費の形で説明)
応募申請時の労働生産性 = 8,000万円 ÷ 20人 = 400万円/人
投資内容
- 自動搬送+検査の半自動化(設備+連携ソフト)
- 省力化で月150時間を創出 → 高付加価値品の段取り最適化・小ロット対応へ振り向け
- 従業員の解雇は行わず、教育と配置転換で運用
効果報告時(例:効果報告3回目時点の「直近の事業年度」)
- 労働者数:20人(維持)
- 付加価値額:9,200万円(高付加価値品比率UPで営業利益増+減価償却増を説明)
効果報告時の労働生産性 = 9,200万円 ÷ 20人 = 460万円/人
CAGR計算(効果報告回数=3 の例)
比率 = 460 ÷ 400 = 1.15
年平均成長率(CAGR)=(1.15 ^ (1/3) − 1)×100
≒(1.0477 − 1)×100 = 約4.77%
この設計なら、解雇で分母を操作せず、省力化で創出した余力を高付加価値へ再配分して付加価値額を増やし、結果としてCAGR+4.0%を超えるストーリーが成立します。
モデルケース② サービス業:受付・会計・予約を統合し、創出時間を「単価改善・リピート施策」へ
前提(応募申請時:直近確定決算)
- 労働者数:10人
- 付加価値額:4,000万円
応募申請時の労働生産性 = 4,000万円 ÷ 10人 = 400万円/人
投資内容
- モバイル受付/予約一元化/会計セルフ化/顧客管理(統合)
- 月120時間を創出 → 客単価UP(提案・継続率改善)に投入
- 従業員は維持し、教育と役割分担で運用
効果報告時(例:効果報告4回目時点)
- 労働者数:10人
- 付加価値額:4,700万円
効果報告時の労働生産性 = 4,700万円 ÷ 10人 = 470万円/人
CAGR計算(効果報告回数=4 の例)
比率 = 470 ÷ 400 = 1.175
年平均成長率(CAGR)=(1.175 ^ (1/4) − 1)×100
≒(1.041 − 1)×100 = 約4.10%
サービス業は「作業時間削減」だけだと弱くなりがちですが、創出時間を高付加価値業務に振り向ける(単価改善・継続率改善・リピート施策)まで描けると、会社全体の成果として説得力が上がります。:contentReference[oaicite:11]{index=11}
必ず押さえるチェックリスト
- 応募申請時の労働生産性:直近確定決算で算出(前提を明記)
- 効果報告時の労働生産性:報告時点で期末を迎えた直近年度の値で算出(運用ルールを固定)
- CAGR+4.0%:効果報告回数を踏まえ、式に沿って到達する数値設計
- 解雇での操作はNG:省力化で生まれた余力を高付加価値へ再配置する設計
- 算出根拠の提出:労働生産性・給与支給総額・1人当たり給与支給総額の根拠表を用意
まとめ
今回は「中小企業省力化投資補助金」と「労働生産性」について、公募要領の要点を踏まえてリライトしました。ポイントは下記の通り。
- 労働生産性は付加価値額÷労働者数で定義され、年度の使い方(申請時・報告時)が重要
- 要件は労働生産性CAGR+4.0%以上(3~5年計画)で、式に沿った設計が必須
- 主として解雇で分母を操作する計画はNG。省力化→高付加価値へ再配置が王道
- 審査は部分最適より会社全体の成果(賃上げ等)、算出根拠の妥当性を重視
- モデルケースのように、効果報告回数を前提にCAGRを逆算すると要件クリアの計画に落とし込みやすい
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