「省力化投資補助金(中小企業省力化投資補助事業〈一般型〉)」を活用したいけれど、
省力化指数って何?どうやって計算すればいいの?と不安に感じていませんか。
本記事では、公募要領や中小企業庁が公表している「中小企業省力化投資指針」などの一次情報をもとに、省力化指数の定義・計算式・審査での見られ方を整理し、さらに製造業・サービス業などを想定したケーススタディで具体的なイメージを持てるように解説します。
この記事でわかること
- 省力化投資補助金〈一般型〉の概要と、公募上求められる成果指標の全体像
- 公募要領・省力化投資指針に基づく「省力化指数」「省力化指標」の定義と計算式
- 実務で使いやすい省力化指数の計算ステップと、Excelでの整理ポイント
- 製造業・バックオフィス業務などを想定したケーススタディと投資回収の考え方
- 審査で評価されやすい事業計画の書き方と、つまずきやすい注意点
Contents
1. 省力化投資補助金〈一般型〉とは?まずは全体像を押さえる
1-1 制度の目的と位置付け
省力化投資補助金〈一般型〉の正式名称は「中小企業等省力化投資補助事業(一般型)」です。
人手不足や賃上げの要請が高まる中で、ロボット・IoT・AI・クラウドなどを活用した省人化・自動化投資を行う中小企業等を支援することを目的としています。
公募要領では、対象となる事業者は「生産・業務プロセス、サービス提供方法の省力化を行う者」とされており、補助事業を通じて労働生産性の向上と賃上げを実現することが求められています。
中小企業省力化投資補助金関連リンク
1-2 補助額・補助率のイメージ
公募要領(一般型)では、従業員数ごとに以下のような補助上限額が定められています(カッコ内は賃上げなどの特例適用時)。
- 5人以下:750万円(1,000万円)
- 6~20人:1,500万円(2,000万円)
- 21~50人:3,000万円(4,000万円)
- 51~100人:5,000万円(6,500万円)
- 101人以上:8,000万円(1億円)
補助率は原則として中小企業 1/2(小規模企業者・再生事業者は2/3)、1,500万円を超える部分は1/3となります。
1-3 成果指標としての「4つの数値指標」
一般型の公募要領では、技術面の審査において次の4つの観点が重視されると明記されています。
- 省力化指数
- 投資回収期間
- 付加価値額(およびその年平均成長率)
- オーダーメイド設備(専用設備)の導入かどうか
このうち、省力化指数は「業務プロセスがどれだけ省力化されるか」を表す中心的な指標であり、申請時の事業計画だけでなく、採択後の効果報告でも達成状況の確認が求められます。
(2)省力化指数
省力化指数= [(設備導入により削減される業務に要していた時間)-(設備導入後に発生する業務に要する時間)] ÷(設備導入により削減される業務に要していた時間)で計算されます。
本指数に用いる「設備導入により削減される業務に要していた時間」には既存業務の削減業務の時間を組み込むことが基本です。
加えて、新規出店を行う場合では、新たな業務プロセスで潜在的・将来的に存在する人手の削減時間も組み込むことが可能です。
2. 公募要領・指針における「省力化指数」と「省力化指標」の定義
2-1 事業計画上の「省力化指数」の定義(一般型)
省力化投資補助金〈一般型〉の公募要領では、「省力化指数」について、次のような計算式が示されています。
省力化指数 = [(設備導入により削減される業務に要していた時間) − (設備導入後に発生する業務に要する時間)] ÷ (設備導入により削減される業務に要していた時間)
よりイメージしやすい形に言い換えると、
- 削減時間:新しい設備によって減った人手作業の時間
- 増加時間:設備導入によって新たに発生する機器操作・監視・調整などの時間
としたときに、
省力化指数 = (削減時間 − 増加時間) ÷ 削減時間
となります。
2-2 中小企業省力化投資指針における「省力化指標」の定義
一方、中小企業庁が公表している「中小企業省力化投資指針」では、カタログ型の製品登録などに用いる指標として「省力化指標」が定義されています。
ここでは、製品カテゴリごとに
- 業種
- 対象業務領域
- 想定される導入環境(従業員数や従来手法など)
を設定したうえで、
その製品を導入した場合に該当業務プロセスの業務量が削減される割合を「省力化指標」と定義しています。
式は次の通りです。
省力化指標 = [(製品導入により代替される業務量) − (製品導入により新たに発生する業務量)] ÷ (製品導入により代替される業務量)
指針では、原則として省力化指標が20%以上であることを
カタログ登録の要件とする旨も示されています。
つまり、
- 補助事業の事業計画で使う「省力化指数」
- カタログ型で製品カテゴリごとに設定される「省力化指標」
は文脈が少し異なりますが、いずれも「導入前後の業務量(時間)がどれだけ減るか」を割合で示す指標という点では共通しています。
3. 実務で使える省力化指数の計算ステップ
ここからは、現場で実際に計算する際のステップを、
できるだけシンプルに整理します。
3-1 ステップ1:対象となる業務プロセスを明確にする
まず、どの業務プロセスを省力化の対象とするかを決めます。
例えば、次のような単位で切り出します。
- 製造業:部品のピッキング~組立~検査のうち「検査工程」だけ など
- 物流業:入庫検品、棚入れ、出荷検品のうち「出荷検品」など
- バックオフィス:請求書処理、経費精算、給与計算のうち「請求書処理」など
対象を広げすぎると計測が大変になるため、ボトルネックとなっている主要工程を1~2つに絞るのが現実的です。
3-2 ステップ2:導入前の作業時間を数値化する
次に、設備導入前の作業時間(導入前工数)を把握します。
方法としては、
- タイムスタディ(ストップウォッチ・動画撮影)
- 作業日報・システムログからの集計
などがあります。
3-3 ステップ3:導入後の作業時間・新たな作業時間を見積もる
設備導入後のプロセスをフロー図にし、
- 自動化されて削減される作業時間
- 機器操作・監視・メンテナンスなど新たに発生する作業時間
を分けて見積もります。
SIer(システムインテグレータ)の提案書やPoC(試験導入)の結果があると説得力が高まります。
3-4 ステップ4:省力化指数を計算する
具体的な計算の流れは次の通りです。
- 導入前作業時間:A(時間)
- 導入後作業時間:B(時間)
- 削減時間:A − B
- 設備導入に伴い新たに発生する作業時間:C(時間)
- 省力化指数 = (削減時間 − C) ÷ 削減時間
パーセント表示したい場合は、最後に100を掛けます。
3-5 簡単な数値例
例えば、
- 導入前:月100時間
- 導入後:月70時間(30時間削減)
- 新たな設備操作等:月10時間
とすると、
削減時間 = 100 − 70 = 30時間
省力化指数 = (30 − 10) ÷ 30 = 20 ÷ 30 ≒ 0.67(≒ 67%)
となります。
4. ケーススタディ:業種別に見る省力化指数と投資効果のイメージ
ここからは、実務イメージを持ちやすくするために、簡略化したケーススタディを3つ紹介します。
(数値はあくまで例示であり、実際の申請では自社のデータに基づいた算定が必要です)
ケース1:製造業の目視検査を画像認識システム+ロボットで自動化
前提
- 製品の外観検査を作業者2名で実施
- 導入前は1日あたり合計16時間(2名×8時間)、月20日稼働 → 月320時間
- カメラ+AI画像認識+排出ロボットを導入
導入後の想定
- 目視検査は原則不要、NG品の目視ダブルチェックのみ
- システム監視・メンテナンスなど新たな作業が月40時間発生
- 検査プロセスの人手作業は月80時間に削減
省力化指数の計算
導入前作業時間 A = 320時間/月
導入後作業時間 B = 80時間/月 → 削減時間 = 320 − 80 = 240時間
新たな作業時間 C = 40時間/月
省力化指数 = (240 − 40) ÷ 240 = 200 ÷ 240 ≒ 0.83(≒ 83%)
投資回収期間イメージ
- 投資額:3,000万円(うち補助金1,500万円、自己負担1,500万円)
- 1時間あたり人件費:2,500円
- 年間削減工数:240時間 × 12ヶ月 = 2,880時間
- 新たな作業時間:40時間 × 12ヶ月 = 480時間
年間ネット削減工数 = 2,880 − 480 = 2,400時間
年間削減人件費 = 2,400時間 × 2,500円 = 600万円
自己負担分1,500万円をこの削減で回収すると仮定すると、
単純計算で約2.5年で投資回収可能、というストーリーになります。
ケース2:バックオフィスの請求書処理をRPAで自動化
前提
- 月1,000件の請求書を手入力で会計ソフトへ登録
- 導入前:1件あたり3分 → 合計3,000分(50時間)/月
- RPA(自動読み取り+仕訳候補生成)を導入
導入後の想定
- RPAが自動入力、担当者は内容チェックと例外処理のみ
- チェック・修正に1件あたり30秒 → 1,000件で約8.3時間
- RPAのエラー処理など新たな作業が月2時間程度発生
省力化指数の計算
A(導入前時間)= 50時間
B(導入後時間)= 8.3時間 → 削減時間 = 41.7時間
C(新たに発生)= 2時間
省力化指数 = (41.7 − 2) ÷ 41.7 ≒ 39.7 ÷ 41.7 ≒ 0.95(≒ 95%)
このようにバックオフィスのRPA化は、省力化指数の観点では非常に高い数値が出やすい領域です。
ケース3:SaaS企業のカスタマーサポートをチャットボットで省力化
前提
- 月間サポート時間:480時間(8時間 × 20営業日 × 3名)
- 問い合わせのうち40%はFAQレベルの定型質問
- AIチャットボット+管理画面のUI改善を実施
導入後の想定
- FAQレベルのうち半分をチャットボットが自己解決
- 月間サポート時間が360時間に削減(120時間削減)
- チャットボット運用・チューニングに月20時間
省力化指数の計算
A = 480時間(導入前)
B = 360時間(導入後) → 削減時間 = 120時間
C = 20時間(新たな作業)
省力化指数 = (120 − 20) ÷ 120 = 100 ÷ 120 ≒ 0.83(≒ 83%)
5. 省力化指数を「採択される数字」にするためのポイント
5-1 before / after を工程表とセットで見せる
審査では、単に「省力化指数○○%」と書くだけでなく、
- 導入前の工程表(作業フロー+工数)
- 導入後の工程表(どの工程が自動化されるか)
- 日次・月次・年次での削減時間の根拠
をセットで説明することが重要です。
5-2 タイムスタディや動画・ログで「証拠」を用意する
MoMo社などの解説では、次のようなエビデンス資料の添付が推奨されています。
- 導入前の作業動画(スマホ撮影でも可)
- 秒単位のCSVデータとピボットグラフ
- RPAやシステムログのスクリーンショット
これらはそのまま「省力化指数の計算根拠」として活用でき、審査側も数値の妥当性を判断しやすくなります。
5-3 投資回収期間・付加価値との一貫性を持たせる
公募要領では、
- 省力化指数
- 投資回収期間
- 付加価値額の増加
などを総合的に評価すると記載されています。
そのため、
- 省力化で浮いた時間をどの高付加価値業務に再配分するか
- その結果として付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)がどう増えるか
- 増加する付加価値と人件費を前提に、賃上げ要件をどう達成するか
を一連のストーリーとして整合させることが重要です。
6. よくあるつまずきポイントと注意点
6-1 省力化指数だけ高く、賃上げや付加価値とつながっていない
省力化だけに意識が向き、「浮いた時間を何に使うか」が示されていない事業計画は、
計画面や政策面で評価が伸びにくくなります。
指針でも、
省力化で生まれたリソースを高付加価値業務に振り向けることの重要性が強調されています。
6-2 計算根拠があいまいで、「なんとなく」の数字になっている
例えば、
- 「作業時間30%削減」と書いてあるが、工程ごとの根拠がない
- 同じ業務でも月によって工数が大きく変動しているのに平均値だけ書いている
といったケースです。
この場合、審査側から見ると「楽観的な見積もりではないか」「現実性に乏しい」と判断される可能性があります。
6-3 省力化効果は大きいが、投資額が大きすぎて回収期間が長い
省力化指数が高くても、投資額が大きすぎて投資回収期間が極端に長くなると、技術面評価で不利になり得ます。
公募要領では明確な「何年以内」という数字は示されていませんが、3年以内くらいを一つの目安として意識しておくことをおすすめしあm。
7. まとめ:省力化指数は「現場データ」と「ストーリー」で決まる
今回は、省力化投資補助金における省力化指数についてまとめてきました。ポイントは下記の通りです。
- 省力化指数は「導入前後で人手作業がどれくらい減るか」を示す指標で、公募要領で計算式が定義されている。
- 中小企業省力化投資指針における「省力化指標」も本質的には同じ考え方で、20%以上が目安とされている。
- 計算の鍵は、対象業務の切り出し・導入前後の工数計測・新たに増える作業時間の見積もりの3ステップ。
- 製造業の検査工程やバックオフィスのRPA化など、省力化指数が高くなりやすい典型パターンを押さえつつ、自社の実データで根拠を示すことが重要。
- 省力化指数単体ではなく、投資回収期間・付加価値額・賃上げ計画と一貫したストーリーに仕上げることで、審査で評価される事業計画に近づく。
自社の業務に当てはめてみると、「どこから手を付ければよいか」「どの程度の削減効果が出そうか」といったイメージが湧いてくるはずです。
まずは対象工程の洗い出しと導入前工数の見える化から着手してみてください。
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