「中小企業新事業進出補助金」(以下「新事業進出補助金」)については現在、補助事業者つまり「事務局」の公募が開始されています。
事務局の公募の概要
まずは事務局の公募について簡単にみていきたいと思います。
受付期間
令和7年1月16日(木)から令和7年2月12日(水)12時必着
事業の実施内容等
① 中小機構が定める中小企業新事業進出促進事業の公募に係る事務補助業務(HP 公開作業・公募要領編集事務等)
② 補助事業の公募における、申請者に対する案内、申請の受理と取りまとめ、審査の補助業務、審査結果の通知及び採択後の案内
③ 補助事業の審査に当たって中小企業庁及び中小機構が設置する第三者委員会の運営補助業務(当委員会に付議するための、申請者の提出した申請情報を別途中小機構が定める手順に沿って整理・集約した資料の作成業務を含む)
④ 補助事業の実施に係る各種申請の受理、申請内容の審査(必要に応じた補助事業者への確認含む)、通知書の発送等補助事業における申請及び通知に関する一連の事務
⑤補助事業の進捗状況管理、確定検査、支払手続及び事業に関する問合せ対応
⑥補助事業の支払終了後における対応(財産管理・実地調査等)及びフォローアップ(財産処分における受付等の事務処理、補助事業者の義務違反等があった際の交付決定取消、各種分析のための報告徴収)の事務・調査
⑦本事業にかかる申請、審査等を管理するシステムの構築
⑧その他の補助事業に必要となる事項の対応
「事務局」が確定すると、いよいよ「新事業進出補助金」の公募が始まります。令和7年4月頃に公募が開始予定となっています。
新事業進出補助金は、中小企業が新たな市場や高付加価値事業への挑戦を促進するために提供される支援制度です。
ここからは新事業進出補助金を申請するために必要な要件や、条件を満たすためのポイントについて詳しく解説します。
中小企業やスタートアップ企業が活用することで、成長や拡大への足掛かりとなるこの制度の理解を深めましょう。
新事業進出補助金とは?
新事業進出補助金はポスト事業再構築補助金として2025年最も注目されている補助金の一つです。
既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的とした補助金となっています。
まだ細かい情報などは出ていないものの、予算が1,500億円とものづくり補助金を超える規模での予算が組まれています。
新規事業を考えている方はぜひ検討しておきたい補助金であるといえるでしょう。
補助率は1/2で補助上限金額は下記の通り。
- 従業員数20人以下:750万円以上2500万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は3000万円以下)
- 従業員数21~50人:750万円以上4000万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は5000万円以下)
- 従業員数51~100人:750万円以上5500万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は7000万円以下)
- 従業員数101人以上:750万円以上7000万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は9000万円以下)
新事業進出補助金については下記のとおり、中小企業関連の官公庁から資料が公開されています。

(中小企業新事業進出促進事業 独立行政法人 中小企業基盤整備機構)
また公募要領案として「「中小企業新事業進出促進事業」に係る事務局の公募要領」が公開されていますので、必ず確認しておきたいところです。
公募回数
令和8年度末までに公募回数は4回程度
補助予定件数
約6,000件(ただし、1件当たりの補助申請額によっては、予定件数は増減する場合がある。)
補助対象者の要件
新事業進出補助金の正確な要件は発表されていません。
しかしながら、公募要領では下記の通り言及されています。
2.補助対象者
(1)企業の成長・拡大に向けた新規事業※への挑戦を行うこと
※事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること(2)補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率 4.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率 4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
(3)補助事業終了後3~5年で、1人あたり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させること、又は給与支給総額を年平均成長率 2.5%以上増加させること。
(4)補助事業終了後3~5年の間、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金より 30 円以上高い水準とすること
(5)補助事業終了時点までに、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等していること
補助金を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
1. 新規事業への挑戦
最もポイントとなるのは新規事業への挑戦を行うことという要件になるでしょう。補助金申請者は、企業の成長や拡大に向けた新規事業に挑戦する必要があります。
新規事業の定義は次の通りです。
- 新製品または新サービス
- 現在提供していない製品やサービスを新たに開発すること。
- 新規顧客への提供
- これまでの顧客層とは異なるターゲット市場を開拓する取り組みであること。
新規のサービスであることと新たな顧客層であることというポイントです。
この文面をみる限りは、異業種への事業展開をベースに考える必要があるかもしれません。
2. 事業計画の策定
補助事業終了後3–5年の間に、以下のいずれかの成長目標を達成する見込みがあることを計画に明示する必要があります:
- 付加価値額の年平均成長率 4.0%以上
付加価値額とは、売上高から仕入れや経費を差し引いた企業の純粋な生産能力を示す指標です。 - 従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率 4.0%以上
ただ、付加価値額については未達でも補助金返還になる可能性は低いです。
しかしながら、客観的に第三者が見て納得できるような事業計画を策定することは重要です。
3. 賃上げ要件
補助事業終了後3–5年間、以下の賃金水準を維持または引き上げる必要があります:
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準であること。
4. 次世代育成支援対策の実施
補助事業終了時点までに、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していることが条件となります。
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画とは子育て支援を目的とした環境整備に対する計画のことです。
例えば、育児休業制度の充実や短時間勤務制度の導入、子育て中の従業員への支援策を計画・公表することが含まれます。
また、計画内容は社内外で広く周知されることが求められます。
補助金の追加条件
補助金を申請・受給する際には、以下の追加条件にも留意する必要があります。
1. 大幅賃上げ特例
補助事業終了時に、以下の条件を満たすと補助上限が引き上げられます:
- 最低賃金の年額50円以上の引き上げ
- 給与支給総額の年平均6%以上の増加
2. 補助金の返還条件
補助事業終了後に設定された目標が未達の場合、以下の返還義務が発生する可能性があります。
- 給与支給総額要件未達の場合・・未達成率に応じて補助金の返還を求める。
- 賃金要件未達の場合・・毎年度、補助金額を事業計画年数で除した金額の返還を求められる。
- 大幅賃上げ特例未達の場合・・特例による引き上げ分の補助金の返還が必要。
- その他の返還条件・・天災など事業者の責任外の理由による未達成は除外されます。
まとめ
今回は新事業進出補助金を申請するために必要な要件や、条件を満たすためのポイントについて解説してきました。
必要な要件をまとめると下記の通り。
- 新規事業への挑戦: 現在提供していない新製品・新サービスを開発し、新たな顧客層へ提供すること。異業種への事業展開も視野に入れる必要があります。
- 具体的な事業計画の策定: 補助事業終了後3~5年で付加価値額または従業員一人当たり付加価値額を年平均4.0%以上増加させる計画を立てることが重要です。
- 賃上げ要件の達成: 事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準に維持すること。さらに、大幅賃上げ特例を活用する場合は、より高い賃金水準を設定する必要があります。
- 次世代育成支援の推進: 子育て支援を目的とした一般事業主行動計画を策定・公表し、従業員支援の環境整備を行うこと。
新事業進出補助金は、中小企業やスタートアップ企業にとって成長や拡大への大きなチャンスとなる支援制度です。本記事で解説した要件やポイントをしっかりと理解し、適切な準備を行うことで、補助金申請の成功確率を高めましょう。
公募が始まってから申請の準備を始めようと思っていても、想定以上の内容量に申請が間に合わないという話をよくお伺いします。
早めにできることから申請に向けて準備を始めておくことをおすすめいたいします。
弊社では、今後公募が開始される予定である「新事業進出補助金」「中小企業成長加速化補助金」についてもご相談をお受けしております。
弊社はこれまで、ものづくり補助金をはじめとして事業再構築補助金、中小企業省力化投資補助金のサポートも行っており、多数の採択実績があります。また、交付申請や事業化状況報告等の補助金申請後のご相談やサポートも承っております。お困りごとがございましたらお気軽にご連絡下さい。
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