中小企業の成長や新規市場への参入を後押しする「新事業進出補助金」。
ポスト事業再構築補助金といわれており、2025年最も注目されている補助金です。
しかし、実際に補助金を活用する前に、新事業進出補助金のメリットとデメリットをしっかり理解しておくことが重要です。
そこで、今回は、新事業進出補助金の特徴やメリット・デメリット、注意点について徹底解説します。
新事業進出補助金とは?
新事業進出補助金はポスト事業再構築補助金として2025年最も注目されている補助金の一つです。
既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的とした補助金となっています。
まだ細かい情報などは出ていないものの、予算が1,500億円とものづくり補助金を超える規模での予算が組まれています。
新規事業を考えている方はぜひ検討しておきたい補助金であるといえるでしょう。
補助率は1/2で補助上限金額は下記の通り。
- 従業員数20人以下:750万円以上2500万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は3000万円以下)
- 従業員数21~50人:750万円以上4000万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は5000万円以下)
- 従業員数51~100人:750万円以上5500万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は7000万円以下)
- 従業員数101人以上:750万円以上7000万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は9000万円以下)
新事業進出補助金については下記のとおり、中小企業関連の官公庁から資料が公開されています。
(中小企業新事業進出促進事業 独立行政法人 中小企業基盤整備機構)
また公募要領案として「「中小企業新事業進出促進事業」に係る事務局の公募要領(案)」が公開されていますので、必ず確認しておきたいところです。
新事業進出補助金のメリット
① 資金面での大きなサポート
新事業を始める際には、設備投資や人材確保など多くの資金が必要です。
新事業進出補助金では、最大1/2が補助されるため、自己資金の負担を大幅に軽減できます。
また補助上限金額も最大9,000万円と高額のため、事業者にとって大きな力となるでしょう。
② 新市場へのリスク軽減
新市場への参入は不確実性が高く、リスクを伴います。
実際新規事業は失敗する可能性が高いといわれています。
2017年の中小企業白書によると、新事業展開に取り組んだ中小企業の約30%が成功しており、残り70%は成功に至らない、もしくは成果が不明瞭であることが示されています。
しかし、補助金の支援があれば初期投資のリスクを分散でき、チャレンジしやすくなります。
③ 補助対象経費が幅広い
新事業進出補助金は補助対象経費が幅広いという特徴があります。
新事業進出補助金の下記の経費が補助対象となります。
- 建物費
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 広告宣伝・販売促進費
一般的な補助金であれば補助金の対象となる経費は限定的です。
例えば、中小企業省力化投資補助金では製品カタログに記載されている機器のみが対象となりますし、ものづくり補助金であれば建物費は補助対象とはなりません。
しかしながら、新事業進出補助金は事業に関する様々な設備が補助対象となります。
特に大きいのが建物費が補助対象となることです。
通常の補助金では金額が大きい建物費は補助対象外となりやすいのですが、新事業進出補助金では補助対象として認められています。
必ず活用しておきたい経費といえるでしょう。
補助対象経費については下記の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
④ 収益納付を求められない
新事業進出補助金は過去の補助金とは異なり、収益納付は求められません。
収益納付は簡単にいうと、補助金を使って大きな収入が出た場合は、返してね。とうい制度です。
自己負担額を超える利益は補助金の交付額を限度として返金する義務がありました。
しかしながら、今回の新事業進出補助金では収益納付が求められないという記載があるため、どれだけ収入が上がっても、返金する義務はありません。
そのため、儲けられる分だけ設けていいということになります。
⑤ 自社の分析が効率的にできる
新事業進出補助金では、事業計画の策定が必須要件となっています。
これは単なる申請書類の作成に留まらず、自社の現状分析、強みや弱みの洗い出し、新市場における事業戦略の明確化を行う貴重な機会となります。
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をどのように活用すれば、新市場や新事業で最大限の効果を発揮できるのかを整理することで、経営課題が浮き彫りになり、より具体的かつ実現可能性の高い事業計画が作成できます。
その結果、補助金の採択可否に関わらず、経営改善や新事業展開に向けた明確な道筋が見えることが期待されます。
3. 新事業進出補助金のデメリット
① 補助金の採択率には限りがある
新事業進出補助金は非常に注目度が高く、多くの中小企業が申請を行うことが予想されます。
しかし、予算には限りがある(約1,500億円)ため、全ての事業者が補助を受けられるわけではありません。
新事業進出補助金はポスト事業再構築補助金といわれていますが、事業再構築補助金よりも予算が大幅に少ないため、採択率は30%前後と低くなることが予想されます。
そのため、採択されない可能性も十分考慮する必要があります。
② 事業計画書の作成には時間と労力が必要
補助金を申請するためには、詳細かつ論理的に整合性の取れた事業計画書を作成する必要があります。
経営状況分析や市場調査、資金計画、収支見込み、リスク管理など、多岐にわたる要素を盛り込む必要があり、中小企業にとっては大きな負担となることがあります。
そのため、専門家のサポートが必要不可欠となる場合もあります。
③ 補助金の入金タイミングが遅い
新事業進出補助金は、申請から採択、補助金の交付までに一定の時間がかかります。
また、新事業進出補助金は原則後払いとなっており、事業を先行して進める場合、自己資金や融資などで一時的に資金を確保する必要があり、資金繰りに課題を感じる可能性があります。
④ 補助対象外となる経費も存在する
新事業進出補助金は補助対象経費が幅広いとはいえ、全ての経費が認められるわけではありません。
例えば、事業に直接関連しない経費や補助対象外とされる費用が含まれている場合、補助金が適用されないことがあります。
そのため、補助対象経費を正確に把握し、計画を立てることが重要です。
⑤ 補助金の返還義務が発生する場合がある
収益納付は求められないものの、不正受給や事業計画との大幅な乖離、補助対象経費の不正使用が発覚した場合には、補助金の返還が求められることがあります。
また、事業完了後には報告書の提出や実地調査が行われる可能性があるため、補助金の運用には高い透明性と正確な記録が求められます。
新事業進出補助金の申請時の注意点
① 申請要件を満たしているか確認
事業計画の内容が申請要件を満たしていない場合、どれだけ優れた計画でも不採択となる可能性があります。
公式の公募要領やガイドラインをしっかり読み込み、自社の取り組みが補助金の目的や要件に合致しているか確認することが重要です。
② 専門家のサポートを活用する
事業計画書の作成は専門的な知識や経験が求められるため、公認会計士、会計事務所など、補助金申請に精通した専門家のサポートを受けることが有効です。
特に採択率が高まるよう、第三者の視点から計画書のブラッシュアップを行うことをおすすめします。
③ 期限厳守で申請を行う
補助金の申請には厳密な期限が設けられています。
提出期限を過ぎた場合、どれだけ優れた内容でも審査対象外となりますので、早めの準備と余裕を持ったスケジュール管理が欠かせません。
④ 補助金交付後の報告義務
補助金が交付された後も、定期的な進捗報告や事業完了報告が求められます。
不正受給や報告義務違反が発覚した場合、補助金の返還だけでなく、ペナルティが科されることもあります。
まとめ
今回は、新事業進出補助金の特徴やメリット・デメリット、注意点について解説してきました。
ポイントをまとめると下記の通り。
- 大規模な資金支援:最大補助額9,000万円、補助率1/2で自己資金の負担を軽減。
- 幅広い補助対象経費:建物費、機械装置費、広告宣伝費などが対象。
- 新市場参入のリスク軽減:初期投資リスクを分散し、挑戦しやすい環境を提供。
- 事業計画の明確化:申請準備を通じて自社分析や事業戦略が整理される。
- 収益納付不要:収益が出ても補助金の返還義務は発生しない。
弊社では、今後公募が開始される予定である「新事業進出補補助金」「中小企業成長加速化補助金」についてもご相談をお受けしております。
弊社はこれまで、ものづくり補助金をはじめとして事業再構築補助金、中小企業省力化投資補助金のサポートも行っており、多数の採択実績があります。また、交付申請や事業化状況報告等の補助金申請後のご相談やサポートも承っております。お困りごとがございましたらお気軽にご連絡下さい。
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