新事業進出補助金において資産運用的な要素が強い不動産業は採択されにくいのでは?と考えがちの方も多いかと思います。
しかしながら、実際の採択結果を見てみると不動産関連の申請も多く採択されており、意外にも不動産業の方がもっとも活用しやすい補助金の一つとなっています。
本記事では、新事業進出補助金の概要と不動産業が活用する際の注意点、採択事例から読み解く成功のポイントを詳しく解説します。
Contents
新事業進出補助金の特徴
新事業進出補助金(正式名称:中小企業新事業進出促進事業)は、既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業への挑戦を支援する補助金です。
その目的は、中小企業等の生産性向上と賃上げを促し、経済全体の活性化につなげることにあります。
第1回公募は2025年4月22日にスタートし、補助率は1/2、補助額は最大で9,000万円にのぼります。
下表のとおり、従業員数に応じた補助額が設定されており、最低750万円から申請が可能です。
| 従業員数 | 通常の上限額 | 賃上げ特別枠の上限額 |
|---|---|---|
| 21人以下 | 750万円〜2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 〜4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 〜5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 〜7,000万円 | 9,000万円 |
対象経費も幅広く、建物費、機械装置やシステム構築費のほか、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費などが含まれます。
特徴的なのは建物費が補助対象となる点です。
一般的には建物費は金額が高い・汎用性が高いため、補助対象外経費となるのですが、新事業進出補助金では補助対象となっています。
このように補助率・補助額が高く対象経費も多彩であることが、新事業進出補助金の大きな魅力です。
実際の応募状況を見ると、第1回公募では3,006件の応募のうち1,118件が採択されました。
採択率は約37%と決して低くなく、チャレンジする価値が十分にあります。
特に社会性や地域性が評価されやすい不動産関連の取り組みでは、予想以上の採択実績があるのが特徴です。
不動産業における対象事業や注意点については下記の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:新事業進出補助金で不動産事業は補助対象?事例や対象経費、注意点を解説していきます
新事業進出補助金の内容については下記の記事で詳細に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:新事業進出補助金申請サポート徹底ガイド|制度概要・補助率・要件・事例を全て解説
公式情報はこちら:
不動産業は本当に不利?補助対象外の条件と注意点
「不動産業は補助対象外」「不動産業は不利」と言われる理由は、労働を伴わない資産運用型の事業が補助対象外とされているからです。
例えば、不動産賃貸業や駐車場経営、暗号資産マイニングといった事業は実質的な労働を伴わないため、原則として補助金の対象外となります。
また、不動産関連で注意すべき補助対象外経費として、不動産の購入費や構築物の購入費、株式の購入費が挙げられています。
これらは公募要領で明確に除外されているため、申請時には含めないようにしましょう。
さらに、補助対象となった建物費については用途の明確化が求められます。
取得した建物を後に賃貸に転用することは認められず、転用した場合は残存簿価相当額を国庫に返納する必要があります。
用途が不明確な事業計画は、後の転用リスクが懸念され不採択となる典型的な要因です。
単に賃貸収入を増やすための改装や、駐車場の台数増加による収益向上など、労働を伴わない計画は採択されません。
不動産業で補助金を活用するには、「賃貸業」を超えたサービスや付加価値を生む事業を具体的に示すことが不可欠です。
不動産業の採択事例と採択成功のポイント
新事業進出補助金の採択結果を分析すると、不動産関連の事例が意外にも多いことが分かります。
第1回公募では、不動産関連で採択された事例は合計41件ありました。
地域別に見ると、関東が12件、近畿が10件、中部が5件、九州が5件、中国が3件、四国が3件、北海道が2件、東北が1件と、全国各地で採択されています。以下の表はエリアごとの採択件数をまとめたものです。
| エリア | 採択数 |
|---|---|
| 関東 | 12 |
| 近畿 | 10 |
| 中部 | 5 |
| 九州 | 5 |
| 中国 | 3 |
| 四国 | 3 |
| 北海道 | 2 |
| 東北 | 1 |
関東地方や近畿地方の都市部が多いものの、中部や九州など地方圏でも複数件採択されており、地域格差はあまり大きくありません。
次の表は、採択事例の中から代表的な11件を抜粋したものです。
事業計画名を見ると、不動産業が単なる賃貸業にとどまらず、観光・宿泊・飲食・スポーツ・ものづくり・IT等への事業転換や異業種参入を行っていることが分かります。
| エリア | 事業計画名 |
|---|---|
| 北海道 | 不動産仲介・売買のAI査定&レコメンドによる高効率営業モデル |
| 東北 | 都市型観光客向け貸切型プレイルーム併設宿泊施設の開発事業 |
| 関東 | パデルコート設置を中核とした「加瀬のスポーツタウン」新設事業 |
| 関東 | 千葉インバウンドOTA構築事業 |
| 関東 | 「着物×和文化体験居酒屋による訪日客向け新業態」 |
| 中部 | 富山湾岸セルフガイディング・サイクリングツアー事業への進出 |
| 中部 | 極上三河一色産うなぎと現代創作会席を味わう特別な時空間 |
| 近畿 | 高千穂発・地域ブランド型プレミアムクラフトジン事業 |
| 近畿 | 淡路島の酒と地元食材のペアリングレストラン&ケータリング事業 |
| 中国 | 空き家再生による体験型インバウンド宿泊事業の展開 |
| 九州 | 訪日外国人向け日本文化体験型施設『千葉城町 和の旅処』の開業 |
これらの事例から読み取れる成功パターンの特徴を整理すると、次のとおりです:
- 観光・宿泊・体験型サービスへの転換:空き家や既存の建物をリノベーションし、民泊や宿泊施設、文化体験型施設を開業する例が多数あります。
これは、インバウンドや国内観光の需要拡大を背景に、地域資源を活かした体験型観光ビジネスが評価されているためです。 - 飲食・地域食材との融合:地元の食材や酒を活用したレストランや居酒屋など、飲食業への参入も目立ちます。
不動産業者が保有する店舗や土地を活かし、地域の食文化を発信する取り組みは採択されやすい傾向にあります。 - ものづくり・工芸への挑戦:伝統工芸品やクラフトジンの製造、包丁製造など、製造業へ進出する事例もあり。
自社の不動産資産を活用しながら工場や加工場を設けるケースです。こうした事業は地域ブランドの創出や海外展開につながる点が評価されます。 - スポーツ・健康関連施設:スポーツ施設の新設や地域健康拠点の整備など、コミュニティ機能を備えた施設整備も採択されています。地域住民や観光客が集まる場を提供することで雇用や交流を生み出せる点がポイントです。
- デジタル・DX活用:AI査定やDXサービス、外国人向けSaaSなど、不動産業務を効率化し付加価値を高めるIT投資も多く見られます。IoTやAIといった先端技術は高い評価を受けやすく、建物管理のスマート化や利用者体験の向上につながっています。
これらの採択事例に共通するのは、「単なる資産運用ではなく、新たなサービスや価値を生み出す」ことです。既存の建物を活用した地域交流スペースや宿泊施設、IoTを取り入れたスマート管理システム、フィットネス施設やカフェなどへの異業種参入は、いずれも補助金の趣旨に合致する成功例として挙げられています。
逆に、労働を伴わない賃貸増収計画や用途があいまいな建物費は不採択の典型例です。
新事業進出補助金の採択へのポイント
不動産業が新事業進出補助金で採択されるためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう
- 労働を伴うサービス業への転換:賃貸業ではなく、宿泊・飲食・体験・スポーツなど、人が関わるサービスへ業態転換することで補助対象になります。
- 地域資源と結びつける:空き家や地域資源を活かした観光・交流拠点を創出すると評価が高くなります。
- DX・IoTを活用:AIやIoTによる管理効率化、外国人向けアプリやSaaSなど先端技術の導入は高付加価値化につながり採択率が上がります。
- 用途の明確化:補助対象となる建物費や設備費は用途を具体的に記述し、賃貸への転用リスクを排除します。
- プロに相談する:公募要領の解釈や事業計画のブラッシュアップには専門家の支援が有効です。駒田会計事務所では公募要領の最新情報を精査し、対象外リスクのチェックや事業計画書の作成支援を行っています。
まとめ
まずは無料相談から始めてみませんか?
「自分の事業が補助対象になるか分からない」「どのように申請すればいいか不安」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
駒田会計事務所では、初回無料相談を通じて、事業内容やビジョンに合った補助金の活用方法をご提案しています。
- 採択実績300件以上:ものづくり補助金・事業再構築補助金等
- 「新事業進出補助金」にもいち早く対応し、各業種で申請支援中
- 公認会計士が直接対応:制度に詳しい専門家が丁寧にサポート
- オンライン完結・地方対応OK:全国どこからでも相談可能です
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