日本の歯科業界では、人口動態の変化や患者ニーズの多様化に伴い、新たな事業展開が求められる時代に突入しています。
そこで注目されるのが、中小企業を対象とした「新事業進出補助金」です。
新事業進出補助金は中小企業が新たな事業に進出するのに必要な経費を補助するという補助金で、2025年4月から公募開始される見通しとなっています。
そこで、本記事では、歯科医院が補助金を活用してどのような新事業に挑戦できるのか、過去の事例や注目のテーマを交えてご紹介します。
新事業進出補助金とは?歯科も補助対象の可能性が高い
新事業進出補助金はポスト事業再構築補助金として2025年最も注目されている補助金の一つです。
既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的とした補助金となっています。
まだ細かい情報などは出ていないものの、予算が1,500億円とものづくり補助金を超える規模での予算が組まれています。
新規事業を考えている方はぜひ検討しておきたい補助金であるといえるでしょう。
補助率は1/2で補助上限金額は下記の通り。
- 従業員数20人以下:750万円以上2500万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は3000万円以下)
- 従業員数21~50人:750万円以上4000万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は5000万円以下)
- 従業員数51~100人:750万円以上5500万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は7000万円以下)
- 従業員数101人以上:750万円以上7000万円以下(大幅賃上げ特例適用事業者の場合は9000万円以下)
新事業進出補助金については下記のとおり、中小企業関連の官公庁から資料が公開されています。

(中小企業新事業進出促進事業 独立行政法人 中小企業基盤整備機構)
また公募要領案として「「中小企業新事業進出促進事業」に係る事務局の公募要領(案)」が公開されていますので、必ず確認しておきたいところです。
保険診療は対象外?自由診療への展開は可能性大
新事業進出補助金は、基本的に付加価値の高い事業への挑戦を支援するものです。
そのため、一般的な保険診療に依存する事業モデルは補助対象外となる可能性が高いと考えられます。
実際に事業再構築補助金でも下記の通り、公的医療保険・介護保険からの診療報酬からの二重受給になる場合は補助対象外である旨明記されています。
⑭ 国庫及び公的制度からの二重受給
・テーマや事業内容から判断し、間接直接を問わず(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が目的を指定して支出する他の制度(例:補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業
※補助対象経費が重複していない場合でも、テーマや事業内容が国が支出する他の制度と同一又は類似内容の事業である場合は対象外となります。
※なお、これまでに交付を受けたもしくは現在申請している(公募申請、交付申請等すべて含む。)補助金及び委託費の実績については、必ず応募申請時に入力してください。申請する事業が、これらとの重複を含んでいないか事前によく確認してください。
しかし、自由診療や異業種展開における新しい取り組みは、補助金の対象となる可能性が非常に高いです。
内容について解説していきます。
自由診療の補助対象の可能性が高い理由
自由診療が新事業進出補助金の補助対象となる可能性が高い理由は下記の通り
- 事業再構築補助金でも補助対象に
- 自由診療は高付加価値なサービスとして評価されやすい
- 高齢者、乳幼児、美容というテーマは社会的需要が高く、新規性や成長性が期待できる
- 歯科の専門技術を活かした医療・美容分野の融合は、独自性が評価されやすい
例えば、事業再構築補助金では、以下のような事例が採択されています。
- 顎形成を伴う審美歯科と美容皮膚科を融合させたクリニックの開設
- 歯科診療技術を活かし高齢者無呼吸症候群の自費診療事業で社会貢献
- 高い治療技術と既存カルテを活用した美容歯科事業への進出
- 子どもたちの成長を阻害しない歯科矯正と口腔機能向上のための高精度義歯の制作
- 一般矯正歯科による乳幼児と親子のための産後ケア教育事業
これらの事例からも、自由診療は補助対象として評価されやすい傾向があることが分かります。
他事業への展開も補助対象に!
歯科医院が異業種に進出する場合も補助対象となると考えられます。
特に、「食」や「健康」をテーマにした事業展開は、事業再構築補助金でも採択事例が多く見られました。
代表的な採択事例は下記の通り。
- 地域企業の健康経営を支援する労働衛生コンサルタント事業
- 歯に優しいスイーツ店への進出事業
- コンディショニング施設開設により地域住民の健康促進に貢献する計画
- 「食」と「歯科医療」を融合した咀嚼力強化事業
これらの事例では、歯科医院が持つ健康維持のノウハウを活用しながら、地域社会や異業種に貢献する姿勢が高く評価されています。
注目の新事業テーマ3選
上記を踏まえて、新事業進出補助金を活用する際に注目すべきテーマを3つご紹介します。
1. 高齢者向け自由診療
高齢化が進む日本では、高齢者の口腔ケアや健康維持はますます重要になっています。
訪問診療の強化や、高齢者向けの無呼吸症候群治療など、社会的ニーズの高い事業が注目されています。
具体例:
- 義歯製作や調整を含む訪問診療事業
- 高齢者の健康寿命を延ばすための口腔ケア講座
2. 美容と医療の融合
審美歯科と美容医療の組み合わせは、自由診療として高収益が見込まれる分野です。
特に、ホワイトニングや顎形成、顔全体の調和を考えた治療は人気があります。
具体例:
- 審美歯科と美容皮膚科を併設したクリニックの開設
- AIを活用した歯列矯正プランの提供
3. 健康促進型事業
「食」や「健康」をテーマにした異業種展開も大きな可能性を秘めています。
地域住民の健康をサポートする事業は、長期的な収益性と社会貢献が期待されます。
具体例:
- 歯に優しい食品やスイーツの開発・販売
- 咀嚼力向上を目的としたフィットネス施設の運営
まとめ
本記事では、歯科医院が補助金を活用してどのような新事業に挑戦できるのかというテーマで解説してきました。
ポイントは下記の通り。
- 自由診療を活用した高付加価値事業の展開: 自費診療や美容医療との融合が補助対象として有望。
- 異業種への進出: 「食」や「健康」をテーマにした事業展開は採択実績が高い。
- 高齢者向けのケア事業: 訪問診療や義歯調整など、高齢化社会に対応した取り組みが注目される。
- 地域貢献型事業の推進: 地域住民の健康促進を目的とした施設やサービスが評価されやすい。
- 補助金の条件確認と適切な計画立案: 公募要領を確認し、事業計画を明確化して申請することが重要。
弊社では、今後公募が開始される予定である「新事業進出補助金」「中小企業成長加速化補助金」についてもご相談をお受けしております。
弊社はこれまで、ものづくり補助金をはじめとして事業再構築補助金、中小企業省力化投資補助金のサポートも行っており、多数の採択実績があります。また、交付申請や事業化状況報告等の補助金申請後のご相談やサポートも承っております。お困りごとがございましたらお気軽にご連絡下さい。
こちらよりご相談ください。
ものづくり補助金の申請代行サポートについては、こちらよりご相談ください。
事業再構築補助金の申請代行サポートについては、こちらよりご相談ください。