新事業進出補助金の事業計画を作成するにあたって、非常に重要な要素のひとつが「付加価値額」です。
付加価値額は、補助金の交付要件や採択判断に影響する指標であり、一定以上の成長見込みを事業計画に盛り込む必要があります。
しかしながら、
- 「付加価値額ってそもそも何?」
- 「どうやって計算すればいいの?」
- 「人件費の範囲は?減価償却費は何年で割るの?」
と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、新事業進出補助金における付加価値額の定義、計算方法、算出根拠、そして達成できなかった場合の扱いまで、わかりやすく解説します。
事業再構築補助金を参考にした具体事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
新事業進出補助金における「付加価値額」とは?
新事業進出補助金では、「事業の成長性」や「生産性向上」を示す指標として「付加価値額」の増加が求められます。
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
この定義は、従来の「事業再構築補助金」でも用いられていたものであり、財務3要素をもとに事業の本質的な価値創出力を示すものです。
新事業進出補助金の付加価値額の定義はまだされていませんが、ほとんどの補助金では上記の定義と同様になっています。
そのため、おそらく新事業進出補助金も同様の定義かと思われます。
人件費の範囲に注意!【法人・個人で違いあり】
付加価値額の中で一番迷いやすいのが「人件費」の定義です。法人と個人で対象範囲が異なります。
【法人の場合】
- 売上原価に含まれる労務費(福利厚生費・退職金等を含む)
- 一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与、賞与、福利厚生費、退職金
- 外注費として計上される派遣・短時間労働者の給与
【個人事業主の場合】
- 福利厚生費(⑲)
- 給料賃金(⑳)
※「専従者給与」や「事業主本人の所得」は人件費に含めません。
法人の場合は役員給与といった事業者への給与も人件費にふくまれますが、個人事業主の場合は事業者への給与は補助対象とはなりません。
なぜ付加価値額が重要なのか?
新事業進出補助金では、補助金の交付条件として一定の付加価値額の成長が求められます。
公募要領(案)では下記の通り、付加価値額の向上が求められていました。
(2)補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率 4.0%以上増加、又は従業員
一人当たり付加価値額の年平均成長率 4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定す
ること
つまり、補助事業終了後に3〜5年かけて毎年平均4%の付加価値額成長を見込まなければなりません。
新事業進出補助金だけではなく、補助金全般的にいえることですが、あくまで目的は企業の稼ぐ力を高めることです。
稼ぐ力を図る要素として付加価値額が使われているということになります。
付加価値額の成長率の考え方
例: 決算月:3月、補助事業開始:2025年10月、終了:2026年9月
⇒ 基準年度は2026年4月~2027年3月。ここから3~5年後(2029年3月〜2032年3月)までに年平均4%の成長を達成すればOKです。
毎年増え続ける必要はなく、最終的に平均成長率が4%を超えていれば問題ありません。
付加価値額の計算・算出のポイント
■ 営業利益
- 新規事業の収益計画から引用
- 売上・コスト・利益率の明確な見通しが必要
■ 人件費
- 過去実績+1〜2%の増加を見込む
- 採用や配置転換、スキルアップ施策と連動させて記載
■ 減価償却費
- 購入予定設備の耐用年数を使って計算
- 別紙で資産リストを添付すると説得力UP
【採択事例から学ぶ】付加価値額の作り方
株式会社八芳園(事業再構築補助金 参考)

(事業再構築補助金 採択事例 株式会社八芳園)
売上高と営業利益においては、別途の収益計画から数字を引用しているケースが多いです。
収益計画の算出根拠や策定方法は下記の記事を参考にしてみてください。
人件費においては前年度の人件費に1~2%をプラスして算出しています。
新しい事業を行う場合、人を増やすのか、配置異動によってカバーするのか、従業員の質を高めてカバーするのかを明記した方が良いでしょう。
減価償却費においては別紙の資料で取得予定資産の一覧を明記し、それぞれ法定耐用年数を調べて償却しています。
ポイントをまとめると下記の通り。
- 営業利益は新規サービスの収益計画を根拠に
- 人件費は過去データ+1〜2%で設定
- 減価償却費は耐用年数に基づいて算出
有限会社市場印刷(事業再構築補助金 参考)

(事業再構築補助金 採択事例 有限会社市場印刷)
こちらの事業計画書も同様に、別途の収益計画から数字を引用しています。
売上高の算出方法は事業計画書を策定する上でも重要なので、しっかりとページ数を使って根拠をもって解説することをおすすめします。
人件費は過去の実績値をベースに作成しています。
このように過去の実績値をベースにして数字を作成するというのも、事業計画を策定する上では重要と言えるでしょう。
ポイントをまとめると下記の通り。
- 売上高は事業戦略との整合性に基づき説明
- 人件費は過去3年平均で算出
- 減価償却費は設備内容をもとに明確化
【よくある質問】付加価値額が達成できなかった場合は?
原則として返還義務はないと思われます。
事業再構築補助金時も付加価値額が達成できなかったときのペナルティはなかったためです。
あくまで「計画時点での成長見込み」が求められているだけで、実際の結果が未達成でも、虚偽や不正がない限り補助金の返還義務は発生しません。
ただし、進捗報告の際に大きな乖離がある場合は、改善報告などが求められる可能性もあります。
まとめ|新事業進出補助金の付加価値額は“成長力”の証明
今回は新事業進出補助金における付加価値額の定義、計算方法、算出根拠について詳しく解説しました。
ポイントは下記の通り。
- 付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
- 人件費には外注費や福利厚生費も含まれる
- 成長率は年平均3%(または5%)が必要
- 根拠のある収益・人材・設備計画が鍵
- 未達成でも原則ペナルティなし
付加価値額の計画は、採択の可能性を左右する重要なポイントです。少しでも不安があれば、専門家へご相談ください。
弊社では、今後公募が開始される予定である「新事業進出補助金」「中小企業成長加速化補助金」についてもご相談をお受けしております。
弊社はこれまで、ものづくり補助金をはじめとして事業再構築補助金、中小企業省力化投資補助金のサポートも行っており、多数の採択実績があります。また、交付申請や事業化状況報告等の補助金申請後のご相談やサポートも承っております。お困りごとがございましたらお気軽にご連絡下さい。
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