補助金の圧縮記帳とは?仕組み・仕訳・適用条件をわかりやすく解説

「補助金を受け取ったら税金が増えるのでは?」「圧縮記帳という言葉は聞くけれど、仕訳がわからない」と悩んでいませんか。
補助金の圧縮記帳は、一定の設備投資について、補助金に対応する課税を将来に繰り延べる制度です。当期の納税を抑える一方、将来の減価償却費が減少します。
本記事では、適用条件と1,000万円の機械を購入する場合の仕訳を解説します。
✅ 補助金の圧縮記帳とは何か、その仕組みと税務上のメリット
✅ 圧縮記帳を適用するための条件と対象となる補助金
✅ 直接減額方式・積立金方式による具体的な仕訳方法
✅ 圧縮記帳のメリット・デメリットと実務上の注意点
✅ 中小企業省力化投資補助金などを活用した設備投資のポイント
Contents
補助金の圧縮記帳とは?仕組みをわかりやすく解説
圧縮記帳は補助金にかかる税負担を将来に繰り延べる仕組み
圧縮記帳では、要件を満たす補助金に対応する金額を、税務上の経費である「損金」に算入し、固定資産の税務上の取得価額を減らします。
1,000万円の機械に補助金500万円を充て、500万円を圧縮すると、税務上の取得価額は500万円です。以後の償却もこの金額が基礎になるため、税金が永久に免除される制度ではありません。
なぜ補助金を受け取ると圧縮記帳の検討が必要なのか?
法人の補助金収入は、原則として税務上の収益である「益金」に含まれます。一方、機械代は通常、使用期間に分けて「減価償却費」にします。
この計上時期のずれにより、設備代金を支払った年度に納税負担が発生し得るため、圧縮記帳を検討します。
圧縮記帳をする場合としない場合の違い
機械1,000万円・補助金500万円・5年間の均等償却を仮定すると、違いは次のとおりです。
圧縮記帳をしない場合
- 補助金収益:500万円
- 圧縮による損金算入額:0円
- 税務上の取得価額:1,000万円
- 年間の税務上の減価償却費:200万円
圧縮記帳をする場合
- 補助金収益:500万円
- 圧縮による損金算入額:500万円
- 税務上の取得価額:500万円
- 年間の税務上の減価償却費:100万円
違いのポイント:圧縮記帳をすると受給年度の所得を抑えられる一方、翌年度以降の減価償却費は年間100万円少なくなります。
根拠:法人税法第42条。税額の差は後述のモデルケースで確認します。
圧縮記帳は、設備投資後の手元資金を確保する選択肢です。当期と将来の納税額を比較しましょう。
補助金の圧縮記帳を適用するための条件
適用には、交付目的・使途・確定時期・申告手続きの確認が必要です。補助金という名称だけでは判断できません。
国庫補助金等に該当すること
国や地方公共団体から、固定資産の取得・改良のために交付される補助金などが対象です。独立行政法人等を経由する間接交付も、一定の要件を満たせば対象になります。
実際に、省力化投資補助金の一般型は、中小機構の圧縮記帳等の適用に関する資料で、国庫補助金等に該当すると示されています。
補助金を固定資産の取得や改良に充てていること
交付目的に合った機械・建物・ソフトウェア等の取得や改良に充てる必要があります。機械購入分400万円と広告費分100万円を受給しても、全額を圧縮できるとは限りません。機械分も、資産への配分と圧縮限度額を確認します。
補助金の返還不要が確定していること
原則として、法人は事業年度末、個人はその年の12月31日までに返還不要が確定している必要があります。補助金適正化法に基づく額の確定通知を受けた補助金は、この要件に該当します。
なお、「条件違反時は返還する」という一般的な条件があるだけで、適用対象外にはなりません。実際に返還が必要になった場合は別途処理します。根拠:国税庁・法人税基本通達10-2-1。
確定申告など必要な手続きを行うこと
法人は決算で所定の経理を行い、別表十三(一)などの申告書類を作成します。仕訳だけでは完了しません。
個人事業主は、所得税法第42条による「総収入金額不算入」として扱い、国税庁所定の明細書を確定申告書に添付します。
適用可能性を確認するチェックリスト
- 国庫補助金等に該当する根拠を確認できるか
- 交付目的に合った固定資産を、所定の時期までに取得・改良したか
- 固定資産に充てた補助金額を、他の経費分と区分できるか
- 返還不要の確定時期を確認できるか
- 法人・個人に応じた決算処理と申告書類を準備できるか
補助対象経費と圧縮記帳の対象は必ずしも一致しません。交付通知と経費明細を資産ごとに照合しましょう。
補助金の圧縮記帳の仕訳方法を具体例で解説
法人の処理には「直接減額方式」と「積立金方式」があります。以下は実在企業ではないモデルケースです。
【モデルケース】食品製造会社が包装機械を導入
- 機械の取得価額:1,000万円
- 機械購入に充てた補助金:500万円
- 最終的な設備代の自己負担:500万円(消費税等を除く)
- 償却期間:5年間、毎年均等に償却すると仮定
取得・補助金の確定・入金は同年度、初年度から1年分を償却すると仮定します。消費税、残存価額・備忘価額、月割は省略しています。実際は償却方法・法定耐用年数・使用開始時期で変わります。
補助金を受け取った際の仕訳
先に収益計上すべき事実がない前提では、機械購入と補助金受領を別々に記録します。「借方」は仕訳の左側、「貸方」は右側です。
機械を購入したとき
借方:機械装置 1,000万円
貸方:普通預金 1,000万円
補助金を受け取ったとき
借方:普通預金 500万円
貸方:補助金収入 500万円
入金前に収益計上する場合は、「未収入金/補助金収入」を計上し、入金時に「普通預金/未収入金」で振り替えます。収益を二重計上しないようにしてください。
直接減額方式による圧縮記帳の仕訳
圧縮損を計上して機械の帳簿価額を減らし、要件・限度額を満たす部分を損金にします。
圧縮記帳を行うとき
借方:固定資産圧縮損 500万円
貸方:機械装置 500万円
1年分の減価償却を行うとき
借方:減価償却費 100万円
貸方:減価償却累計額 100万円
圧縮直後の帳簿価額は500万円、1年分の償却後は400万円です。圧縮損の計上自体による現金の支出はありません。
積立金方式による圧縮記帳の仕訳
機械の会計上の取得価額を1,000万円のまま残し、利益剰余金の中に積立金を設けます。税務申告で圧縮額を差し引く「申告調整」が必要です。
以下は、仕組みを示すため税効果会計を省略し、圧縮額の積立てと当期償却に伴う取崩しを分けた例です。
圧縮額を積み立てるとき
借方:繰越利益剰余金 500万円
貸方:圧縮積立金 500万円
会計上の減価償却を行うとき
借方:減価償却費 200万円
貸方:減価償却累計額 200万円
減価償却に対応する積立金を取り崩すとき
借方:圧縮積立金 100万円
貸方:繰越利益剰余金 100万円
積立ては利益剰余金の振替であり、会計上の費用ではありません。税務では圧縮額500万円を減算し、会計と税務の減価償却費の差100万円を加算します。当期の純減算額は400万円です。
税効果会計を適用する場合は、将来の税負担を表す「繰延税金負債」も計上します。税率30%なら、償却前の圧縮額500万円に対応する負債は150万円、税引後の積立金は350万円です。
圧縮記帳後の減価償却費の計算方法
税務上は、両方式とも次の計算になります。
(取得価額1,000万円-圧縮額500万円)÷5年=年間100万円
直接減額方式では会計上も年間100万円、積立金方式では会計上は年間200万円を計上し、税務申告で調整します。積立金方式でも、税務上1,000万円全額を償却できるわけではありません。
積立金方式でも税務上の償却額は同じです。会計と税務の資産残高を分けて管理しましょう。
補助金の圧縮記帳を活用するメリット・デメリット
メリット① 補助金受給年度の税負担を抑えられる
課税を繰り延べられますが、税額差は単純な「補助金×税率」とは限りません。初年度の償却費の違いも考慮します。
前述のモデルで、補助金・圧縮損・減価償却費を計上する前の所得を毎年1,000万円、法人税等の税率を一律30%と仮定します。
圧縮記帳をしない場合の税額
- 初年度の課税所得:1,300万円
- 初年度の税額:390万円
- 2~5年目の各年の税額:240万円
- 5年間の税額合計:1,350万円
圧縮記帳をする場合の税額
- 初年度の課税所得:900万円
- 初年度の税額:270万円
- 2~5年目の各年の税額:270万円
- 5年間の税額合計:1,350万円
比較のポイント:初年度の税額は圧縮記帳をしたほうが120万円少なくなります。ただし、5年間の税額合計はどちらも1,350万円です。
初年度の所得は、圧縮なしが1,000+500-200=1,300万円、ありが1,000+500-500-100=900万円です。税額は初年度に120万円減り、その後4年間で年30万円ずつ増えます。実際は税率・欠損金・税額控除等で変わります。
メリット② 設備投資後の資金繰りを改善しやすい
納税を繰り延べた資金を借入返済や運転資金に回せます。本例なら初年度に120万円を手元に残せます。
デメリット① 将来の減価償却費が少なくなる
償却費が減る分、将来の課税所得は増えます。当期が赤字なら目先の資金効果が乏しい場合もあるため、将来の利益と欠損金の利用状況も確認します。
デメリット② 会計処理や申告手続きが複雑になる
積立金方式は、申告調整と取崩しの継続管理が必要です。売却・廃棄時には、残る積立金の取崩し・益金算入も確認します。参考:法人税基本通達10-1-2。
当期の税額だけで決めず、借入返済と将来の納税を同じ資金繰り表で比較しましょう。
補助金の圧縮記帳で注意したいポイント
交付決定と収益計上のタイミングは同じとは限らない
採択・交付決定・額の確定・入金は別の手続きです。受給する権利と金額の確定時期を交付条件から判断します。
例えば、決算前に収益計上すべき状態となり、翌期に入金される場合は未収入金を検討します。公募要領の一般的な説明だけで入金年度と決めつけず、税法上の帰属時期を確認してください。
設備投資と補助金の受給年度が異なる場合がある
前期に購入・償却した設備でも、直ちに対象外とはなりません。ただし、既償却額を踏まえた圧縮限度額の計算が必要です。補助金を先に受け取り、取得が翌期になる場合等は、法人税法第43条・第44条等の特別勘定を個別に検討します。
圧縮記帳と消費税の取扱いは分けて考える
補助金そのものは、通常、対価性がないため消費税の「不課税」です。これは法人税・所得税の課税関係とは別です。根拠:国税庁「No.6157 課税の対象とならないもの」。
設備購入時の仕入税額控除は別の要件で判断し、圧縮後の取得価額に合わせて減らすわけではありません。補助制度上の消費税相当額の除外・返還も確認します。
個人事業主の場合は法人と税務処理が異なる
個人事業主は、要件を満たす補助金を総収入金額に算入せず、取得費からその金額を控除して償却します。法人の圧縮損を、そのまま必要経費として計上する処理とは区別してください。
申告には「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」が必要です。参考:国税庁「No.2202 国庫補助金等を受け取ったとき」。
設備取得費以外に充てた補助金を混ぜない
広告費や月額サービス利用料などを区分せず、受給額全額を機械の圧縮に充てると誤りになる場合があります。ソフトウェア購入と月額利用も、契約内容から資産・費用を判定しましょう。
決算前に交付通知・額の確定通知・取得日・経費内訳を共有し、計上漏れや過大な圧縮を防ぎましょう。
圧縮記帳を活用できる主な補助金
設備投資向け補助金でも、対象は原則として固定資産の取得等に充てた部分です。以下は2026年9月20日時点で確認した公式資料に基づく整理です。
中小企業省力化投資補助金
一般型:現場に合わせた設備・システム導入
一般型は、現場に合わせた設備導入・システム構築を支援します。包装機械と搬送装置を連動させるなど、オーダーメイド性のある省力化投資が候補になります。
中小機構は「中小企業省力化投資補助事業(一般型)における圧縮記帳等の適用について」で、国庫補助金等に該当し、他の要件も満たせば圧縮記帳等を適用できるとしています。ただし、経費補填分は対象外です。
申請要件・対象経費は、一般型公式サイトと第8回公募要領(2026年9月18日改訂)で確認できます。
カタログ注文型:登録された省力化製品を導入
登録製品を選び、販売事業者と共同申請する仕組みです。一般型とは対象・申請方法が異なります。
公式の適用資料で、要件を満たす場合の圧縮記帳等が認められています。公式サイト・公募要領(2026年3月19日改訂)と照合し、製品代・導入費の資産計上部分を確認します。
省力化投資補助金の一般型とカタログ注文型の違いを比較!どちらを選ぶべき?
対象設備と申請方法から、自社に合う類型を整理できます。
ものづくり補助金
革新的な製品・サービス開発等の設備投資を支援します。公式FAQは、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額になると説明しています。固定資産への充当など、税法上の要件確認が必要です。
受給案件の確認先:ものづくり補助金公式サイト・公募要領/公式FAQ「税制優遇措置との併用」。
新事業進出補助金
既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する制度です。第4回公募要領では、固定資産取得に充てる補助金の圧縮記帳が認められる一方、固定資産取得以外の部分は対象外とされています。
旧制度は公募終了と案内されています。新規申請では、従来の両補助金とは別制度の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」を確認してください。第1回公募要領にも固定資産取得分の圧縮記帳が記載されています。
【2026年最新】マシニングセンタに使える補助金3選|省力化・新製品・新事業別に解説
設備投資の目的に応じた補助金選びと、自己負担・入金時期を確認できます。
受給案件に適用される公募回と資金使途を確認し、新規申請の制度と混同しないようにしましょう。
補助金を活用した設備投資は専門家への相談がおすすめ
申請段階から税負担と資金繰りを考える
相談は発注前が理想です。補助金は原則後払いなので、最終的な自己負担と、先に用意する資金は異なります。設備1,000万円・補助金500万円でも、先に設備代全額と消費税等が必要です。つなぎ融資、納税、運転資金まで計画します。
自社に適した補助金を選ぶことが重要
既存工程の省力化、新製品開発、新市場進出では候補が異なります。補助額だけでなく、投資回収や賃上げ要件の実現可能性も比較しましょう。
中小企業省力化投資補助金の補助対象経費に関して深堀します!
カタログ注文型の経費を解説。制度改定があるため、最新の公式要領と照合してください。
駒田会計事務所による補助金申請サポート
駒田会計事務所は、補助金の検討から事業計画の整理、申請準備を支援しています。見積書・導入目的・決算月・導入時期を用意して相談すると具体化しやすくなります。
圧縮記帳を含む税務対応は、申請支援との契約範囲・担当を確認し、必要に応じて顧問税理士と連携しましょう。
発注前に、補助金の活用可能性・先行資金・納税負担をまとめて確認しましょう。
補助金の圧縮記帳に関するよくある質問
補助金を受け取ったら必ず圧縮記帳が必要ですか?
いいえ、義務ではありません。適用条件を満たす場合に、当期と将来の納税額・資金繰りを比較して判断します。
圧縮記帳をしないとどうなりますか?
法人では原則として補助金を益金に算入し、取得した資産は圧縮前の取得価額を基に償却します。受給年度の税負担が増える可能性がある一方、以後の償却費は圧縮した場合より多くなります。
圧縮記帳は個人事業主でも利用できますか?
はい、要件を満たせば所得税法上の総収入金額不算入を利用できます。法人の積立金方式とは異なり、所定の明細書を添付して申告します。
圧縮記帳をすると税金は安くなりますか?
当期の税負担を抑えられる場合がありますが、基本は課税の繰延べです。将来の償却費減少を含めると、生涯の税負担が必ず減るとはいえません。
圧縮記帳をした場合、減価償却費はどうなりますか?
税務上は圧縮後の取得価額を基に計算するため、少なくなります。積立金方式では会計上の償却費を維持し、申告時に調整します。
中小企業省力化投資補助金は圧縮記帳できますか?
一般型・カタログ注文型とも、公式資料で一定の要件下の適用が示されています。ただし、経費補填分まで全額対象になるわけではありません。
判断に迷う場合は、補助金名に加えて、法人・個人の別、対象資産、決算日、確定通知の内容を伝えると、具体的な税務確認につながります。
まとめ|補助金の圧縮記帳は将来の税負担まで考えて活用しよう
今回は補助金の圧縮記帳についてまとめてきました。ポイントは下記の通り。
- 圧縮記帳は、一定の補助金に対応する課税を将来に繰り延べる制度です。
- 国庫補助金等への該当、固定資産への充当、返還不要の確定、申告手続きなどを確認します。
- 直接減額方式と積立金方式では、会計処理と税務申告の方法が異なります。
- 当期の税負担を抑える一方、将来の税務上の減価償却費は減少します。
- 省力化投資補助金などの活用では、発注前から自己負担・入金時期・税務処理を検討しましょう。
まずは無料相談から始めてみませんか?
「自分の事業が補助対象になるか分からない」「どのように申請すればいいか不安」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
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✅ 駒田会計事務所では、補助金申請のご相談を全国対応で承っております (監修:公認会計士 駒田裕次郎| プロフィールを見る)
- 採択実績300件以上:ものづくり補助金・事業再構築補助金等
- 「新事業進出補助金」にもいち早く対応し、各業種で申請支援中
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